金色の蛹

庭で雑草を取っていたら、ハイビスカスの落ち葉に混ざって金色の蛹が出てきた。
やっとオオゴマダラが庭の蓬莱鏡に来てくれた事を知ってうれしかった。
オオゴマダラは日本に生息する蝶の中では一番大きい種類で、白い羽根に黒い線と
点々模様があり、ゆっくりゆらりと悠長に飛ぶ。
初めて見た時はその大きさに驚いたけれど、金色の蛹を見た時は、あまりの美し
さにしばらく見とれていた。蛹は顔が映るくらいつやがありその生きている金色
はツタンク・アーメンの黄金のマスクと同じ色に輝いていた。
以前道に落ちていた蛹を持ち帰り、毎日観察して羽化まで見届けた事があった。
折り畳まれていた羽根がぴんとのびて乾くまでのプロセスはとても美しかった。


オオゴマダラの幼虫は蓬莱鏡を食べて育つ。昔から浜沿いの薮に自生していた蓬莱
鏡は護岸工事で減り、同時にオオゴマダラも激減してしまった。「蝶を増やす為に
蓬莱鏡を植えよう」という小さな呼びかけに、4年程前、私も庭に一苗植えた。
蓬莱鏡と聞くと、めでたい印象だけれどこの植物には毒がある。オオゴマダラの幼
虫は、毒の葉を食べる為鳥に狙われないらしい。幼虫には、角みたいなとげとげが
あり、いかにも「毒を持ってますよ」という形をしている。

蝶園で見た蛹は、葉にぶら下がっていたから私はいつも葉や枝の周りに蛹がないかと
探していたのだが黄金の蛹は思わぬ所から出てきた。蛹がひっついている葉の部分を
玄関にある観葉植物の葉っぱに洗濯ばさみで留めて、蛹がぶら下がる形にした。
横を通るたびに細かく観察した。黒い点々模様が透けて見えているから羽根の準備も
できている様だった。風が吹くたびに金色の蛹はイヤリングみたいにゆらゆら揺れた。

三日目のお昼に蛹を見に出たら、もうそこには外側の薄い皮だけしかなかった。

島の三月は春の空気と冬の空気が混ざり合って眠たい。いつも私は眠いのだけれど、
その日は特に眠くて午前中はうとうとしていた。四年も待ったのに蝶の羽化を見逃し
てしまった。蝶が残した薄い蛹のヴェールにはまだ金色がところどころに残っていて、
今でも風が吹くたびに
薄くきらきら光る。

 

 

 

 

 

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dozing in spring-
a butterfly emerges
from my palm

tamasudare

 

 

 

 

 

 

 

 

photo / tamasudare

 

 

 

 

 

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